アメマス特集「晩秋~来春シーズンは良型のアメマスに期待」|NPO法人 シュマリナイ湖ワールドセンター
2013 November

アメマス特集「晩秋~来春シーズンは良型のアメマスに期待」

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201311

「かつて」の害魚は今!

「かつて」北海道では、アメマスはイトウを含め害魚と呼ばれ駆除されていました。
ここ朱鞠内湖でもアメマスはワカサギ漁師の天敵であり、捕獲駆除まではしないものの嫌われ者の魚として有名でしたが、 近年ではイトウに次いで人気の魚に!

釣り好きの方にとって、アメマスと言えば阿寒湖か島牧等の海アメ、また最近では音別川を想像するのではないでしょうか。
ここ朱鞠内湖のアメマスは小さいイメージがありますが、実は、近年朱鞠内湖のアメマスがだんだんと大型化し、 70オーバーのアメマスも釣れる湖となっています。

約16年前に発売された釣り雑誌「ノースアングラーズ(つり人社)」 では、朱鞠内湖のアメマスの平均サイズは35cm~40cmとなっており、 当時は釣り人から「昔は大きいアメマスがいたんだけどな~」という話をしばしば聞いていました。 その頃の朱鞠内湖のアメマスは、あまりルアーフライの釣りの対象魚とはされず、メインはサクラマスとイトウでした。
当時、漁協が遊漁に力を入れ始めるにあたりアメマスの資源についても大切だと考え、 朱鞠内湖でのアメマスの実態について調査(研究する程で無いですが)を行いました。
朱鞠内湖は元々上流域にあるダム湖で、湖に流入する河川の7割が落差(標高差)のある河川なこともあり、 サクラマスやイトウよりもアメマス(イワナ)の産卵、生息に有利な河川ともいえます。 しかし、河川を見る限りでは(その生態が標高差のある河川に適した)アメマスに有利な環境があるように思われる反面、 当時、それらの河川が流入する朱鞠内湖は、サケ科3種(イトウ/サクラマス/アメマス)の中でサクラマスが最も多い湖でした。
ところが、近年ではアメマスが増え、その平均サイズも35cm~55cm、また稀に60cm~70cmが釣れるようになってきました。
「かつては」と言われていたアメマスの資源量や体サイズに戻って来たのです。 

なぜ「かつて」の資源量に戻って来たのか?

アメマスはヤマベ(サクラマス)と同じように川で生まれ、降海型(海に下る、朱鞠内湖では湖が海の役割を担う)と残留型(川で留まる)の2タイプがいます。
河川で生まれ、10cm~15cm程になるまで川で1~2年を過ごし、その後餌が豊富な湖へと下り、 さらに1年~2年をかけて35cm~40cm程に成長してからようやく親となり成熟し、晩秋に川で産卵します。 また、産卵したアメマスはサケやサクラマスとは違い、1回の産卵では死なずに湖に戻り、さらに大きくなっていきます。

朱鞠内湖のアメマスは、湖の水温の影響からか6下旬頃から河川にあがってくるため、 朱鞠内湖周辺の河川では、6月下旬~9月下旬頃までの間人気の釣り対象となっていました。
また、当時は釣った魚は食べることが当たり前だったので、成熟して初めて産卵に遡上したアメマス(35cm~40cm)はほとんど捕獲され、 2度目以降の産卵のできる大型の個体が残らない状態でした。

10年前までの朱鞠内湖漁協では漁業権(組合が管理できる権利)が朱鞠内湖、すなわち湖のみにしかありませんでした。
イトウ、アメマス、サクラマスを含めサケ科の魚は川へ産卵にあがります。 釣り人にとっては広大な湖で釣るよりも川で釣る方が効率がよく釣れることも事実ですので、釣り人は川へ向かいます。
そのような状況下で組合では資源増殖のため魚を絶やさないようにと努力はしていましたが、 当時はふ化施設も貧弱で、増殖技術のノウハウが乏しかったため、試行錯誤している最中でした。 当時から北海道では、生物多様性や病気、ウイルスの関係等から魚を養殖場から購入して湖に放流するスタイルではなく、 地場産の魚を使った増殖事業が重視される傾向にありました。実際、朱鞠内漁協では、当初からワカサギ以外は地場産(朱鞠内湖) の親魚を使い、卵放流や稚魚放流を行っていました。 また、その放流もやみくもに行うのではなく元々いる天然魚に配慮し、かつて魚が沢山いたと言われる河川1水系のみに放流を行っています。
しかし、朱鞠内湖は非常に大きな湖のため流入河川も多く、少々の放流数ではすぐに魚が増える訳ではありません。 放流と並行して魚道等の環境整備を精力的に行い、将来「かつての魚がたくさんいた河川」をとり戻すようにと事業を進めていますが、 当時は、川に放流してもようやく成長して遡上した魚が次々と釣られていく状況で、 河川に漁業権の無い朱鞠内湖漁協にとっては頭の痛い課題でした。
さらに、湖で漁を行う漁師や釣り人は朱鞠内湖漁協へ遊漁料を納めてくださっているその一方で、 川では遊漁料を払っていない釣り人によって産卵期の大事な時期の魚(*1) が釣り上げられて持って帰られているという矛盾に嫌な思いをする釣り人が少なくなく、漁協へは苦情が多く寄せられていました。
( *1 イトウ、アメマス、ワカサギの話です。ヤマメのみは昔から朱鞠内湖に流入する全ての河川で禁漁でした。)

そこでまずはじめに、北海道大学と連携して悪質な釣り人の監視を強化しました。
当時、既に朱鞠内湖に流入する河川はヤマベ(サクラマス)のみは全河川禁漁となっており、湖に流入する河川はほぼ北海道大学研究林の管轄でした。
それらの河川で釣りをするには、事前に入林許可証の携帯提示が必要となっているにも関わらず、 無許可で入林したり林道ゲートの鍵を壊して入るといった悪質な釣り人が横行していたため、これらの監視を強化していきました。
実際あってはならないことですが、当時はゲートの鍵が秘密裏に出回っていていたり、隣町で1,500円で販売していたりするほどのひどい有様でした。
また先に述べたとおり、何度修理してもその鍵を平気で壊して不法侵入するような輩もおり、研究林を管理する北海道大学内での釣り人のマナーは悪評が高く、 釣りを生業とする立場の漁協スタッフは頭が上がりませんでした。

そんな無法地帯とも言える悪質な釣りの横行する中、地元警察とともに車中泊で見張りを行ったり、 7月頃からゲートの前で漁協の組合員で交代しながら朝から晩まで監視を続けました。
監視中には釣り人の所有するクーラーの中身を確認させてもらい、禁漁のヤマベを所持している場合は証拠写真を撮り、違反に関する処分は警察に任せます。
アメマスは当時禁漁対象ではなかったので、「アメマスも貴重な魚なので必要以上は逃がしてあげて下さいね」と理解を求める活動は続けていましたが、 多い時には一人45Lクーラーにいっぱいアメマスが詰まったクーラーを見て愕然とすることもありました。

そんなこんなで3年たった頃から、アメマスが急に湖で増え始め、漁師や釣り人の間でも反響が出てきました。
もちろん、ワカサギ漁師にとってはあまり面白いことではありませんが、一方、釣り人の間では 「これまで朱鞠内湖のアメマスはたまに釣れる程度で型も小さく興味が無かったけど、これからは面白くなりそうだね」と言う人が増えたのも事実です。
しかしなにより意外だったのは、ヤマベ(サクラマス)の禁漁河川を徹底し、アメマスはお願い程度だったはずだったのに、 アメマスが増えた印象の方が強かったことです。
漁業組合では朱鞠内湖のアメマスも銀山湖(*2)のように川を保護すれば大きなアメマスが復活し、 立派な遊漁の対象魚として楽しめるようになると考えました。
( *2 福島県南会津郡檜枝岐村と新潟県魚沼市にまたがる、阿賀野川水系只見川上流に建設された奥只見ダム湖)

アメマスも重要な遊漁の対象として考え、増殖技術を確立させたその努力とその実績が道(北海道庁)に認められたこともあり、 10年前の漁業権更新に伴うルール改正の際には、重要河川3河川の漁業権、アメマスの漁業権を取得することができました。
また、ルールについては、漁民、遊漁者ともに重要河川3河川については、すべての魚種禁漁とするよう変更しました。
それから10年経った現在、アメマスは安定した資源量が朱鞠内湖に生息しています。
現在は、気候の変動等で資源のばらつきはあるものの「かつて」の朱鞠内湖のアメマスの姿に少し近づいたように思います。

今年の晩秋から来春はアメマスの当たり年に!

ここ近年ワカサギ漁をしている経験から、特に今年はアメマスが定置網に入る量が多いのを実感します。
産卵を終え、帰って来たアメマスの35cm~60cmのサイズが多く見られ、釣り人からも「60cmのアメ釣れました」といった情報も入ります。 現時点での朱鞠内湖はイトウ狙いの方がほとんどではありますが、アメマスも十分に楽しめる晩秋となりそうです。
本来、アメマスの活性が高いのは春。
来春はもっと凄いことになるかも!と、とても楽しみです。

元の環境に・・・

朱鞠内湖に流入する河川は支流を含めるとたくさんありますが、昔の森林伐採等で山からの土砂が流れて来ている河川や道路横断管(土管) 等がまだまだ魚にとって妨げになっている箇所が多数存在します。
今後はこれらを改善していき、アメマスを含めイトウやサクラマスの増殖事業を進めてまいります。

(文)朱鞠内湖淡水漁業協同組合 中野信之

[番外編] ところで、アメマスの調査ってどんなことをしているの?

朱鞠内湖では、北海道立さけます・内水面水産試験場の方々と協力してイトウ以外にもアメマスやサクラマスの調査をしています。

数年前から、湖にいるアメマスの大きさを測定し、アブラビレの一部をカットして同位体の比率(炭素や窒素など) を調べることによって朱鞠内湖ではどの大きさのアメマスがどんなエサを食べているのかを調べています。

朱鞠内湖では、大きいアメマスは魚を主に食べていると考えられていますが、ワカサギを食べているのか?それともウグイを食べているのか? どれくらいのサイズまでは水生昆虫を多く食べているのか? ─ といったようなことがわかるそうです。
現時点ではまだ調査中ですが、何かわかったらまたお伝えしたいと思っています。